「先輩は繊細そうな顔をして、ふてぶてしい本性を隠してるんじゃないですか?」

「ふてぶてしいって・・・」


ひどい言い方ね、と私が笑うと、彼は私に初めて好意的な笑顔を向けた。

言いたい放題だ。

そんな言い方をされたのも初めてだった。

見くびられ、やけにひ弱そうに見られることならよくあるけれど。

どちらがましなのかは、わからない。



「嘘ですよ。でも、先輩は強いですよ。きっと見えないところで、すごく」

「え・・・?」

「俺なんかよりも、ずっと」


そう言う彼の顔がとても、悲しそうに見えて。



「強くないよ、私は。強くない」


失うことに慣れて、傷つくことに慣れて、そのうち痛みに鈍くなって。

それを、強さと勘違いしてはいけない。

痛みを感じないことが、強いわけではないから。

なにかを失うことと、守れないことが違うように。