そのボールを拾い上げて、薄くんはにやりと笑った。
「さすが。全国一の3ポイントシューターと言われてただけありますね」
「私を誰だと思ってるの?」
私にしては珍しく、自分に自信をもって、ともすれば嫌味のように聞こえる台詞を口にした。
当然、返ってくるのは称賛の言葉だと思ったのだけれど。
「誰って、ただのマネージャーの先輩ですけど」
「褒めてくれないの?」
薄くんは呆れたように笑った。
「シュートが入ったら仲間として認めるとは言いましたけど、褒めるなんて言ってませんから」
そう言って、自身もジャンプシュートを打つ。
男子用とはサイズが違うから、少し扱いづらそうだ。
「まあ、でも。そのくらい自信持ってて偉そうな方が、先輩らしいですよ」
「褒めたつもり? けなされてる気がするんだけど」
今まで私にそんなことを言ってきた人間はいなかった。
偉そうというのはともかく、自信を持っている方が私らしいだなんて、誰も言ってくれたことはなかった。


