「現に昨日、俺が発言したら、みんなが次々に高橋先輩の良いところを挙げていったんですよ。桜井先輩が止めるまで、いくつも」


その光景を思い浮かべると、鼻の奥がつんと痛んだ。

私の良いところなんて、そんなにいくつも挙げられるほどないのに。

誇張でもいい。

それでも嬉しかった。



「ただ、高橋先輩もわかってると思うんですけど、岡田先輩だって本気であんなこと言ったわけじゃないですから」

「わかってるよ」


感情が昂ぶって、その行き先がたまたま私に向いただけだ。

そういう時、人は思ってもみない行動に出たりする。

岡田くんのあの発言も、そのようなものだと思う。

普段の彼は、むやみに人を嫌い、意図的に傷つける人間ではないから。


「岡田くんもたぶん、稲垣くんの気持ちを考えすぎたんだと思う。稲垣くんの悔しさに、自分の怒りが重なって、ちょっと自分を見失っただけ」

「まあ、そんなところですね。
ちなみにその後の岡田先輩のケアは須賀先輩が担当ですから。あの能天気そうな顔を見てたら、岡田先輩もすぐ癒されますよ」

「能天気って、なかなか言うね」

「本当のことですから。でもちゃんと敬ってるんで大丈夫です」


ふざけているのか真面目なのかわからない口調が面白くて、吹き出して笑った。