けれど、私自身がまず、自分を普通になれないと思い込んでいる。
痛ましい過去が、私を捕えて離さないから。
誰も傷つかなくてよかったのに。
なのにまだ、私は傷つこうとしている時がある。
そうしなければ償えない罪があるのだと、心が叫ぶから。
「感じたこととかしてきたこととか、後悔とか罪悪感とか。そんなの全部抱えてたら、歩けるわけがないじゃないですか。人の痛みまで背負ってどうするんですか。・・・・きついこと言いますけど、誰も先輩と痛みを分かち合おうなんて、思ってないですよ」
その言葉は、私の胸に突き立てられたナイフのようだった。
けれどそこから、まるで氷が溶けるようになにかが広がっていく。
「言い方を変えると、誰も高橋先輩と苦しみたくない・・・・いや、高橋先輩がつらそうにしてるのを見たくないんですよ。そう思われるって、けっこう大きな価値だと思いますけど」
「薄くんも、そう思ってくれてるの?」
「俺の話じゃなくて、バスケ部の一般論を話してるんです」
やけに今日は饒舌だ。
彼はもともと、それほど口数が多い方ではない。
部活中は常に、不言実行という言葉が当てはまるような人間なのに。


