そこで私は、空気を変えるために、大きく息を吐いた。
それは重いため息ではない。
自分の中を満たしている淀みかけた空気を入れ替えるためだ。
まだ、すべて綺麗におさまったわけではないから。
「でも私、自分のこと、口先だけだとも思うんだよね」
まるで独り言のように呟く。
「薄くんも言ってくれたみたいだけど、私は怪我をしたプレイヤーの気持ちはたしかにわかる。でも、その周りの人たちの気持ちは、たぶん理解できないんだよね」
今の私はもう、プレイヤーではないから、過去の気持ちを引っ張り出してきたところで、それは共感とは程遠い。
私は現在進行形で、故障で未来をなくした人間という立ち位置なのだ。
怪我の痛みも、心の苦しみも、仲間から向けられる視線も、なにもかもわかっているけれど、それだけでは足りないのだ。
すべて理解しているとは言えない。
「そんなもんなんじゃないですか」
返事はないと思って一人で喋っていたら、突然そう返された。


