薄くんは気づいたようだ。
昨日の自分の発言がその、私が唯一出した条件に反してしまっていることに。
「じゃあ、今日部活に来なかったのって・・・・」
「それは違うよ。そんなことで無責任に投げ出したりしない」
彼は誤ってとらえてしまったようで、それを訂正した。
「だとしても、先輩が隠したかったことを俺がばらしたことに変わりはないですよね」
「そうだね、でも」
そこで一度言葉を切った。
静かすぎるこの空間の中では、互いの息遣いまで聞こえてしまいそうだ。
「その方がよかったのかもしれない、とも思ってるんだよね」
みんなに知らしめて、技術と経験の違いを見せつけ、プレイヤーとは一線を画して独裁的にチームを操るのがいいというわけではなくて。
きっと私は、これ以上我慢できなかったから。
無知だと決めつけられて、私のこれまでを否定されることに。
「だからそういう意味でも、ありがとう」
「意味がわからないですけど、どういたしまして」
目線をそらしているのは、私の言動が不愉快だったからではないというのはわかっている。
彼の、少しだけ赤らんだ頬と、忙しなく動く指先を見れば。


