「この中の誰も高橋先輩以上の技術は持ってないんですよって、あいつが言っちゃって、そしたら岡田も、どういうことか訊き返して」
そして、私が隠していた私の過去を、言ってしまったらしい。
二年前に全国優勝したチーム、皇ヶ丘学園の紅の魔女のスタメンだったと。
「静かに大騒ぎ、っていうのは言い方がおかしいかな。でも、みんな言葉も出ないくらい驚いてて。皇ヶ丘とか紅の魔女って名前は知らなくても、全国大会で優勝って聞いたら意味はわかるし。
ちなみに、それを知ってた俺と祐輝も驚いたよ。亜美ちゃん、スタメンだったなんて一言も言ってなかったから」
「わざわざ言うこともないかと思って」
調べればすぐにわかってしまいそうなことだというのも理由だけれど。
そして薄くんは、私が故障を原因に泣く泣くバスケをやめたことを話したのだそうだ。
だから怪我をした稲垣くんの痛みは誰よりもわかるのだと。
選手の気持ちを理解できないマネージャーではないのだと。
それは激昂していた岡田くんが言葉を失うほどの剣幕だったらしい。
「俺は嬉しかったな。次のキャプテンは薄がいいと思ってるんだ。だから、その薄が自分たちを支えてくれてる人のことをちゃんと理解して大切に思ってくれてるってわかったから」
とても大人びた、人をまとめ上に立つにふさわしい顔で、桜井くんはそう言っていた。


