そうしているうちにどんどん部員は集まっていき、最後に松葉杖をついた稲垣くんが、桜井くんとともに入ってきた。
俯き気味のその表情はよく見えず、けれど彼の感情は、身体から溢れているかのようだった。
共感できるとか、そういうことではなく。
きっといつかの私も、こんな顔をしていた、と思った。
状況は同じではない。
けれど私に過去を思い出させるには十分だった。
部屋にいる全員の顔を見てから、桜井くんが静かに口を開いた。
「稲垣は、靱帯損傷。大会には出られない」
たとえそれが各々の予想していたとおりのものであっても、それでも与えた衝撃は大きかった。
全員の視線が、稲垣くんに集中する。
それが気配でわかったのか、彼はより顔を俯かせ、そして肩を震わせながら拳を握りしめた。
あまりにも悲惨なその宣告に、誰も口を開くことができなかった。
桜井くんも、続けて言うべき言葉が見つからず、悔しげに唇をかんでいた。


