「すぐ病院に行った方がいいと思います」
「そう。わかったわ」
その時の山田先生は、初めて顧問らしい顔を私に見せた。
そして稲垣くんの家に連絡をし、先生が病院まで連れて行き、そこで彼の母親と落ち合うことになったらしい。
桜井くんと須賀くんに両側から支えられて車に乗り込んだ痛々しい姿を見ていたら、胸がしめつけられるようだった。
その背中からはまだ、闘志が感じられた。
険しい表情でそれを眺めていると、その姿が、いつかの私と重なって見えた。
膝の痛みで、自力で歩けないために支えられている私。
それが、まるで第三者の視点から見ていたかのように、鮮明に浮かび上がってくる。
おかしい。
間違っている。
こんな光景、見たことがあるはずないのに。
それなのに思い出されるのは、絶望、それだけだった。


