夢みる蝶は遊飛する


全員が息をのんだ。

そして。


「山田先生連れてきて!」


近くにいた二年生部員にそう指示し、私もシューズを脱ぎ捨てた。

怪我をした彼をコートの外に出すように残りの部員に言い、走って体育館を出た。


体育教官室に駆け込み、事情もろくに話さずに冷凍庫から袋いっぱいの氷を拝借し、また体育館に駆け戻る。


必死の形相で疾走する私を、外で活動している部活の人たちが眺めているのがわかったけれど、そんなことはどうでもいい。




手遅れにしたくない。

たとえそうなってしまったとしても、できるだけ状況が良くなるように。


バスケで傷つく人間を増やしたくない。

まるで自分を鏡にうつしたような、そんな姿は見たくないから。