夢みる蝶は遊飛する

体育館での部活中、女子の方で仕事をしていた私は、男子のコートが騒がしくなっていることに気がついた。

顔を上げた瞬間、切羽詰まった声で名前を呼ばれた。

嫌な予感が脳裏をよぎった。



「どうしたの?」


走り寄ると、集まっている部員たちの中心で、一人が座り込んでいた。

足首を押えている。


「5-5やってたんだけど、こいつがシュートしたときに、俺の足に着地して捻ったみたいなんだ」


別の部員が事情を説明する。

それを頷きながら聞き、その時の状況を確認したところで、本人に声をかける。



「稲垣くん、立てる?」


彼の顔や首筋につたっているのは、明らかに冷や汗だった。

顔面蒼白、といった風で、首を微かに横に振る。



バスケットシューズを脱がせ、靴下を下げると。


そこはもうすでに、無残なまでに腫れ上がっていた。