夢みる蝶は遊飛する


「おめでとう」


目を見開く沙世の隣ではヒロくんが、悪戯が成功した少年のように笑っていた。



「よかったね、沙世、ヒロくん」


もう一言加えると、沙世が目を瞠ったままで私とヒロくんを見比べた。



「え、なに、どういうこと? 知ってるの!?」



段々と声が大きくなっていく沙世。

けれど、朝のHRまではまだ時間があるから、教室には数人しかいない。

その数人も、自分たちの会話に夢中になっているから、こちらを気にしていない。




「少しだけ知ってる、かな。二人が付き合いはじめたことくらいは」


ほんの少し声を落とした。

けれどそれも無意味なほど、次の瞬間の沙世の叫び声は、甲高く教室中に響き渡った。


「はああああっ!?」


一瞬、クラスメイトたちがこちらに視線を向けた。