夢みる蝶は遊飛する


私は両親に向き直り、そして、小さな声で告げた。


「愛してる」


大好きではなく、愛している、と。

面と向かってはもう言うことは叶わないし、もしそれができたとしても、恥ずかしくて言えないだろう言葉。


大切な人に想いを伝える日に、私は心からの親愛を捧げた。

私と両親を繋ぐ愛は、色褪せない。


写真の中の両親の顔が、いつもより深い笑みをたたえているように見えたのは、気のせいではないはずだ。



じっとそれを見つめ、そして視線を外して何気なくテーブルの上を見るとその瞬間、置いてあった携帯電話が光りはじめた。

音は鳴らないようにしてあるけれど、踊るように光るそれは楽しげにも見える。


メールを一件、受信していた。

そこに書いてあったのは、二文字だけだった。



“成功”



それを読むと、自然と頬が上がっていった。

あえて返信をせず、そのまま携帯を閉じた。