後を追おうかとその後ろ姿を見つめていると、制服の袖が軽く引っ張られた。
立ち上がりかけた少し不自然な体勢のまま振り向く。
ヒロくんが首を横に振っていた。
「でも・・・・」
「大丈夫だから」
私にはそのように思えなかった。
不安で瞳を揺らめかせる私に、彼はもう一度言った。
大丈夫だ、と。
それから彼は私のもとから離れ、沙世を追うこともなく、男子の輪に入っていった。
少ししてから戻ってきた沙世は、なにも無かったかのように振る舞っていた。
沙世がそうしているのに私だけ気にしているわけにもいかない。
私も、先ほどのことを忘れたように、沙世といつもどおりの会話をした。


