夢みる蝶は遊飛する


「ヒロくんならくれる子、たくさんいるでしょう?」


この容姿で、これだけ人好きのする性格ならば。

たとえそれが、彼が作為的につくりだしたものであっても。


事実、彼はいつも人の輪の中心に存在している。

担ぎ上げられているとか、前に押し出されているというわけでなく、自然と。



「それでも亜美ちゃんがくれるものは特別だよ」

「どうして?」

「その理由、訊くんだ?」



その時だった。


今まで黙っていた沙世が、机を蹴るようにして勢いよく立ちあがった。

表情は、険しい。


「・・・・沙世?」

「トイレ行ってくる」


吐き捨てるようにそう言うと、足早に教室を出ていった。