「秘密だよ」 私がそう言うと、彼は拗ねたように唇を少し尖らせた。 「えー、今バレンタインの話してたじゃん」 「聞いてたんじゃない」 子どもっぽい仕草に笑ってしまう。 彼のこうしたひとつひとつの行動は、私を和ませるけれど、それとともに警戒もさせる。 その心に奥には、どんな本性が隠れているのか。 それがわからないから。 「なに作るの?」 「内緒だよ」 そう言ってみたところで引き下がる彼ではない。 「俺にもくれる?」 人懐っこい大型犬のような表情でせがまれる。