「ブラウニーは満点じゃなかったかな。くるみを細かくしすぎたのが失敗だったのかもしれない」
くるみを袋に入れて砕くときに、調子にのって力を入れすぎたうえに、粉々になるまで麺棒で挽いてしまったのだ。
中途半端な大きさのかけらが気になり、結果として粉末状に近いものになってしまった。
そのため、くるみの味と食感がまるでなかった。
「変なところで完璧主義なのね」
沙世はため息をついた。
「でも味は良かったから、本番は頑張ってもっと美味しく作るね」
「期待しておくわ」
そこで、この話は終わるはずだった。
「え、亜美ちゃん、なにを美味しく作るの?」
沙世の席の隣に私が座っていて、そしてその前の席の椅子に後ろ向きに腰掛けたのは、ヒロくんだった。
長い脚を豪快に開いて、瞳を煌めかせて。


