夢みる蝶は遊飛する



「どう、かな・・・・」


いろいろな型でくり抜かれたクッキーを前に、しばし考え込む。

綺麗な色に焼き上がっていて、見た目は売り物とまではいかなくともかなりいいと我ながら思った。

甘い香りを放つそれを、私はまだ食べていない。



レシピどおりに作ったはずだ。

それは間違いない。

レシピブックに載っている材料や手順を何度も確認し、頷く。

分量を量り、混ぜて、型抜きし、焼くだけ。

忠実にレシピを再現したのだから、失敗しているはずがない。



恐る恐る手を伸ばし、きつね色のそれを一枚手に取る。

勢いよく口に放り込み、歯を立てる。

軽い音とともに、バターの香りが広がった。