夢みる蝶は遊飛する


それから沙世は私に、私生活についての質問をいくつもしてきた。


朝は何時に起きるのか。

家に帰ったらなにをするのか。

どんなテレビを観るのか。

なにを着て寝るのか。


一体その質問が、バレンタインに告白することにどう関係するのか、私にはさっぱりわからなかった。

作戦を練るのでもなく、私にリサーチを頼むわけでもなく、ただ私についての質問ばかり繰り返す沙世は、なにを考えているのだろう。

たしかに作戦を立てるにしても、経験の乏しい私では力にならないだろうし、ヒロくんについて私が調べられる程度のことは、沙世はすでに知っているだろう。


疑問ばかりが募っていく。

けれど、その理由がわかった。

沙世の呟きによって。




「亜美みたいに女の子らしくなりたい・・・・」


テーブルに突っ伏したままで、くぐもった声ではあったけれど、ちゃんと聞こえた。

沙世のその言葉は。