「私はもう大丈夫。
それより舞、今日の5対5を観てて思ったけど、プレスがいまひとつじゃない? 全然抑えられてないし、疲れるだけだよ、あれだと」

「やっぱりそう思った? でもさ、マンツーとゾーンはわりと完成してるから、もうひとつやってみたいなって思うんだよね」


「私は、プレスに手を出す前にゾーンとかを完璧にした方がいいと思う。ゾーンも、1-3-1とか、途中でいつも乱れちゃってマンツーと変わらなくなってるし」

「そっか・・・。だよね。今のままじゃ全部中途半端になっちゃうよね」


舞とはこうして、スポーツマン対スポーツマンの会話ができる。

私はそれが楽しくて仕方ない。


他の部員は私が誰よりも本格的にバスケをしていたことを知らないから、ある程度発言を抑えたりもするのだけれど。

舞と二人で話しているときだけは、私は経験も交えて、思っていることをすべて伝えることができる。

私は、他の部員の前で言わなかったことをこうして舞に伝える。

すると、自分と私の意見をまとめて、舞がみんなに言ってくれる。


私は、影でいいのだ。

こうして少しでも、バスケに触れられているのなら。

少しでも、誰かが必要としてくれるのなら。