そして、その場を去ろうとしたところで声をかけられた。
「あの、すみません」
振り向くと、誰かの保護者であろう男性が立っていた。
「はい、なんですか?」
そう訊ねると、その男性は一年生の部員の父親であることを私に話した。
単身赴任をしていてなかなか会えないため、息子の姿をできるだけ見ておきたい。
明日までしかここにはいられないから、今日が部活動参観でよかったと。
そこまで話した後で、少し照れたように笑っていた。
「すみません。どうでもいいことを話してしまって」
にこやかに微笑みかえしながら、とても羨ましく思った。


