自分では一生懸命やっているつもりなのだ。

けれどそれが裏目に出たり経験不足だったりして、結局沙世にほとんど任せてしまった。

型に流し込んだ生地を焼いている間に洗い物を済ませたけれど、油分のついたものを綺麗に洗う自信がなくて、私は食器や器具を拭いただけだった。

二回も皿を取り落としそうになって、沙世をひやりとさせてしまった。


もっと家で祖母の手伝いをしようと決めた。




綺麗に膨らみはじめた生地を見て、まるで自分の手柄のように嬉しくなる。

沙世がいなければきっとこんな風にはならなかっただろう。


今まで私が料理をした経験と言えば、学校の調理実習のみである。

そういえばその時も、皿洗いとスープにコンソメを入れる役割しか与えられなかった。

あれはもしや私に包丁を持たせると危険だという同じ班の人たちの判断によるものだったのかもしれない。


そう呟くと、沙世が長いため息をついた。