今まで私は、両手で過去を抱きしめていた。 けれど過去は、隠し持ったその刃で私を切りつけていた。 過去が重かったのではない。 きっと、私が過去にしがみついていたのだ。 今の私は、片腕にしっかりと大切な思い出を抱えている。 けれど片手は、温かい手とつないでいる。 その手をひかれて行く先は、きっと光に満ちた優しいところだと信じて。 暗闇の中で泣いている少女の姿は、もう見えなかった。