ドアを開けると、沙世はラグの上でかしこまって正座をしていた。

ざっと部屋を見回し、特に見られて困るようなものも無いし、ちらかってもいないので安心した。

エアコンの出す低い稼働音が、やけに耳についた。



「そういえば、亜美の家に来るの初めてだよね」


沙世がもぞもぞと足を崩す。

私が沙世の家を訪ねたことはあったけれど、この家に誰かを呼んだことはない。



「あ、なんか違和感があると思ったら、勉強机が無いんだ」


部屋を見回して、沙世が不思議そうに言う。


「うん。引っ越すときに、邪魔だから捨てたの」


だから勉強はもっぱらラグの上に置かれたローテーブルで行う。

物を多く持つのは好きではないから、引き出しなどのないこのテーブルで十分だ。