「え、お前は?」

「あたしは亜美に勉強教えてもらうの。誰かさんの教え方が下手すぎて、このままじゃ明日の追試やばいのよ」

「それってまさか俺・・・・って、ちょっと、え」


沙世がぐいぐいと私の背を押して家に入ろうとする。

それに逆らうことはできなくて、須賀くんに頭を下げて小さく手を振って、私はドアを開けた。



その音を聞きつけて、祖母がリビングから出てくる。


「私の部屋、二階に上がってすぐ左だから、エアコンつけて待ってて」


その言葉に頷いた沙世は、挨拶をしてから階段を上がっていった。


祖母とともにリビングに入った私は、学校で体調が悪くなったけれどもう大丈夫だということを安心させるために話した。


「ここは東京より寒いし、いろいろあったから、少し疲れただけ」


それでも心配そうに私を見つめる瞳を、見ることができなかった。


「また体調悪くなったら、すぐに言うから」


そうして私は一度も祖母と目を合わさずに、沙世の待つ自分の部屋へ向かった。