二人の言い合いを、微笑ましいと思いながら眺めていたら、私の自宅に着いてしまった。
「送ってくれてありがとう。あと、荷物も持ってくれて」
本当は、まだひとりになりたくなかったけれど、その寂しさは押し隠した。
これ以上望んでいいはずがない。
今の状態が私のすべてであり、これ以上を望むのは贅沢だ。
欲を出してはいけない。
いずれ失うものならば、最初から欲しがらない方がいい。
永遠など、存在しないのだ。
両親にあれほど、永遠の幸福を手に入れてほしいと願い、祈っていたのに。
私の心が生み出したひずみは、矛盾から目をそらしている。
「須賀、あんた帰っていいから」
沙世が犬でも追い払うかのような仕草をする。


