「どうしてまだいるの?」


下校時間はとっくに過ぎている。

二人が学校に残っていた理由が、もしも私に関係しているなら、私は、まだ片手に光を握りしめていることになる。

もしも違っていて、それは沙世が須賀くんに勉強を見てもらうためだけだとしたら。

空をつかんだ私の手は、もう二度と自分からなにかを求めることはないだろう。



「どうしてって、亜美が心配だからに決まってるでしょ!」


その言葉が耳に入ってきた瞬間、私は拳をぐっと握りしめた。

まだ、私には残されたものがあるのだと。

そう思ったらやっと、空虚な肉体に心が吹き込まれた気がした。


「大丈夫なの? 式の途中で倒れたでしょ。保健室に行ったんだけど、寝てるからって入れてもらえなくて。体調悪いの? 病気なの? 悩みがあるの?」


畳みかけて質問をする沙世に、どれから答えればいいのかがわからなくなる。

けれど、最初に言うべきことは決まっている。


「心配してくれて、ありがとう」


喜びからくる笑みを抑えずに。

やっと、普通に笑えた気がした。