「あーもうっ、わからないって言ってるじゃん。あんた教えるの下手! 禿げ上がれこの茶髪!」

「うっせえな。教えてやってるんだから感謝しろよ。茶髪っていわれてもこれは地毛ですー」


「教えてやってるって、なにその上から目線!あたしは教えられてやってんのよ。
ふん、その髪質から考えて、あんた15年もしたら抜け毛に悩まされるわよ」

「俺は禿げねえよっ!
だいたいお前、教えてもらってるくせに態度でかすぎ。もっと俺を敬えよ」


「あーあーうるさいわね、もう黙ってよ。あんたは将来の毛根の心配でもしてれば? 禿げ散らかした上に口うるさいなんて救いようのないオヤジになるわよ・・・・って、亜美っ!」



ドア越しに二人のやりとりを困惑して見つめていた私に、やっと気がついてもらえた。

教室内に入ったけれど、暖房はついていなくて廊下と同じくらい冷え冷えとしている。


そこにいたのは、沙世と須賀くんだった。

沙世と向かい合って座っている須賀くんは、どうやら沙世に数学を教えているらしかった。

そういえば沙世の数学と生物の追試は、天皇誕生日である明日だ。