保健室のちょうど真上にある職員室。

失礼します、と誰にも聞こえないような大きさの声で呟いてから入室した。

その部屋の中央あたり、二年生担当の教師の席が集まっている場所に、担任である佐竹先生の席はある。

先生の姿を確認してから、声をかけた。


「佐竹先生」


パソコンに何かを打ち込んでいた先生が、振り向いた。

「高橋さん! 大丈夫? 終業式が終わってからと、帰りのHRの後に保健室に行ったんだけど、寝てたから」

「はい、大丈夫です」


ここでもまた、控えめながら微笑む。

心配をかけてしまって申し訳ない、という気持ちが伝わるように、眉を下げて。


「お家の方に連絡したんだけど、車がないのよね? だから迎えには来られないってお祖母さんがおっしゃってたけど。もしまだ気分が悪いようならタクシー呼んでくださいってことだったんだけど、私が家まで送ろうか?」


その申し出は丁寧に断った。