私は明日、ここを去る。

叔父に送られて帰ってきたホテルのベッドに、寝転がった。

いきなり突き付けられた多くの事実に、ただひたすら混乱していた。


父の実家が、名だたる企業を総括する長谷川グループであること。

私は今まで父のバスケ選手としての栄光と、それを諦めざるを得なくなった故障の事実しか知らなかったけれど、そこには多くの犠牲と葛藤、そして両親との確執があったこと。

そして父の下した、家を出るという決断。

父に関する空白だった年表は、私が生まれるところまでしか埋まっていない。

けれど、父が私と母を置いて家を出ていった日から現在までが、未だ真っ白のままだ。

考えてみても、やはりわからない。


父がどうしてそこまでバスケにこだわったのか、それはわかった。

自分がなしえなかった、どうしても叶えられなかった夢を、私に託していた父。

父は、まわりからバスケをすることを否定されつづけていたから。

味方がいなかったから。

その生き方を認めて応援してくれる人がいなかったから。