机に落としていた視線をゆっくり上にずらすと、まず目に入ったのは正面に座る叔父の、グレーのベスト。

糊のきいたシャツに包まれた肩と青系のストライプのネクタイの閉められた首を見て、父よりも細身だということに気がついた。

そのまま視線を上げ、私を見つめるふたつの瞳は、父と同じ黒曜石のような輝きをたたえている。

やはり、少し違う部分はあるけれど、この人物は間違いなく父の弟だ。


「聞こえてる?」


じっと叔父を見つめていた私は、先ほどなにか言われたことをすっかり忘れてしまっていた。


「足は、そのままで大丈夫? そんなに畏まらなくていいから」


その言葉に甘えて、私は少しだけ足を崩した。

かつて炎症を起こして変形してしまった私の右脚の膝は、長時間脚を折り曲げていることに耐えられない。

特に今日のような一段と冷え込んだ日は、動きもわずかだけれどぎこちないものになってしまう。

それとは別の理由、つまり緊張からぎくしゃくしてしまう私の動きを見て、叔父は愉快そうに微笑んだ。


「きみの怪我のことは知っているから、気にしなくていいよ」


その言葉に、氷の塊でも飲み込んだように身体の中が一瞬で冷えた気がした。


「どうしてそのことを・・・」

「どうしてだと思う?」


私の疑問に、叔父は質問で返してきた。