でもそれは、今は関係ない。

気がつけば、乗る予定だった電車の時間はとうに過ぎてしまっている。


「ねえ、どうする? これから」


私と一緒に街まで出て買い物だなんて、きっと彼は嫌だろう。

私としては、嫌だというよりも戸惑う気持ちの方が大きいのだけれど。


彼は斜め上を見て、少し唸るように考えた後、わざとらしく咳払いをしてなぜか照れたように笑いながら言った。


「た、高橋さんが良ければ、今日は俺たちで買いに、いいいいい行かない?」


やたらとどもっていたし、大した台詞でもないのに噛んでいるのが気になったけれど、断る理由もないので私は頷いた。


どうして舞と桜井くんが、今日をこのような状況にしたのか、その隠された意図を考えながら。

木々の葉を散らす少し強い風が、私の髪をなびかせた。