きっと私の事なんて 覚えてないのだろう。 少しでも覚えてくれていたら 何か反応があってもいい。 そう思いながらも 私の心臓はバクバク言っていて 心とは裏腹で、 荷物を乗せた台車を持つ手が まだ震えている。 客室に向かうエレベーター内は 私と「先生」しかいなく 無言のままエレベーターの階数 表示をじっと見つめていた。 沈黙の中 口を切ったのは「先生」だった。