一言 叫ぶと 小陽は 二階に戻って行った

「あれぐらい 元気があるなら 大丈夫よ 篠夜さんの 婚約者になれるわ」
娘に 怒鳴られても 悠羽は けろっとして目をキラキラさせている
二人とも
可愛いなぁと 思う 美智彦もどうかと思うが
「篠夜さんか………… 何年ぶりだろう 十年は経ってるな~ 三男っていったら こーちゃんと 同じぐらいだね」
遠い目をして 回想する
「あら ほんと でも あなた そのぐらいに 私達は結ばれたのよねぇ」

「ゆーちゃん……」「あなた……」


二人の間に 幻覚の花びらが 舞っていた



「もうっ ゆーちゃんは!あたしまだ 高校に 入ったばっかりなのにぃ」

せめて あたしに 話しといてよ

悠羽はいつも 自由奔放で 風のよう
いきなり 映画館に行ったり ショッピングに連れ出されたり

そんな 悠羽を 美智彦は楽しそうに見ている 自由である悠羽を

「はぁ~ これなんて読むのよ~」

『篠夜 満月』…

ま まんげつ……?いや 満たされるとかいうから




み つ き ?




「みつき? だ よね いいなぁ みつき あたしと 正反対」

太陽 と 月

偶然…………………?

なんか いやな 感じがする
何で?

さっきは あんなこと 言ったけど
気になるなぁ どんな子だろ?

背高いかな かっこ良くなかったら
どうしょう?

優しいかな

「ん 眠い……… お ふろ 入っ て 寝なきゃ…… あれ まだ あ さ」

ぱた

小陽は いつの間にか 眠った
手紙は 静かに 床に落ちると




ぼっ

消えた


ばさ
『婚約者候補のひとり 妃宮 小陽 手紙を確認 消去完了』

冷たい小さな声が 響いた