カァ カァ カァ
夕焼けのオレンジに包まれ
あの童謡のように 小陽はカラスと帰っている

正確には 鳴き声を聞きながら
「うぅ みんな どこに行っちゃったの? はあ 一人ぼっちかあ」
溜め息を付く

あー 家がとおーいなぁ
てか 篠夜って どこのやつよ! 聞いたことは あるけど
そういえば お客さん 迷惑してたかな
店長に謝って 直ぐ 出てったし
「当分 あそこにはー

ゾワッ

だっ誰っ!?」
背筋に 寒気がする 何かが 小陽の背中に 張りついているよう
振り返ろうと 首を動かそうとするが
恐怖のためか

体が 動かないっ!?

誰っ 誰っ!?

『なるほど
篠夜家が ほしがる理由が解るよ
とても 甘い香りがするね 君は』

後ろから とても冷めた若い男の声が 小陽の 耳に息と共に かかる

そして ゆっくりと小陽の白い首筋に指を這わせる

い いやっ 冷たい 氷みたい
思わず 指の冷たさに ぎゅっと 目を瞑る
『本当に
美味しそうな お人形さんだ
暴れなかったら 何もしないよ?』

「ぃ………ゃ はな…れ……て お願い」
必死に 声を絞り出して 懇願した
『どうしようか………でも
まず

ダンッ

っつぐはっ』

衝撃音と 呻き声が 小陽の耳に入った
男が離れたのか 力が抜けて ストッと 座り込む

「弟の 嫁候補に手を出すんじゃねぇ
出したら お前を 殺す」
さっきの冷たい声とは 真逆の力がこもった声

「大丈夫? 小陽ちゃん?」
そして 優しい声がして 顔を上げると
真っ黒な 髪をした
とても美しい

男性が 小陽に手を 差し伸べていた