白いシャツの袖口から伸びる腕に、ほんの少し触れただけだったのに。

キーケースを渡そうと思っただけなのに。

なのに…。

どうして私がこんな言われ方しなくちゃいけないの!?

思いもよらない返しに、私の脳みそは固まってしまった。



文句の一つでも言ってれば、このムカつきは納まってただろうか。

このイライラが顔に出なかっただろうか。

「莉寿(リズ)どうかした?」

不機嫌丸出しの私に、親友の瑠璃が眉を垂らして私の顔を覗き込んだ。