陸戸はあたしを見て微笑み、
再びマイクに向かって喋り出す。
「僕は10年前、大阪に住んでいました。
そこはすごく田舎で、
自然に囲まれていました」
大阪の風景を思い出しながら、
陸戸は言ってるんだろう。
「その時の僕は、5歳でした。
弱虫で、泣き虫で、
近所の子供達に、
いつもいじめられていました」
陸戸は少し笑いながら言った。
「何も言い返せなかった僕を、
いじめっ子から
助けてくれた女の子が居たんです。
ちょっと、情けない話ですけど」
陸戸はまた笑った。
あたしもつられて
少し笑っちゃった。
「僕達は、一緒に遊ぶようになったんです。
彼女は旅行で遊びに大阪に行ってたので、
一週間でお別れを
告げなければならなかったんです」
陸戸の目は、
寂しそうだった。



