「栖羽」
俺がそう呼ぶと、
栖羽は歯ブラシをくわえたまま
こっちに振り返った。
「ん」
「早いな。俺より早く起きるなんて」
俺は鏡で髪チェック。
寝癖やばい。
栖羽は歯磨きを終え、
うがいして、
髪をいじっとる俺を
じーっとみとる。
「陸戸も寝癖できるんだよねー」
栖羽はニヤニヤしながら
俺の寝癖を触る。
「俺やって人間やし。
寝癖できるの当たり前や」
俺は笑って、
栖羽の頬っぺたをつっつく。
「そだね」
「せーやっ」
顔を洗って、
寝癖を直して、
朝早くからあの場所へ向かう。
旅行最後の日。
どうしても、
栖羽に聞きたいこと、
伝えたいことがあったんや。



