「試すんや。
花嫁にふさわしいかどうか」
陸戸はあたしの耳元で小さい声で言う。
た、頼むからこれやめてください。
「なんで花嫁候補に選ばれたん?
……何も、
覚えとらんの……?」
……どうして
悲しそうな声で言うの……?
覚えてない?って、
何を……?
「……俺のこと、
覚えとらんの……?」
「……へっ……?」
何それ……
どういう意味……?
……分からない……
あたし、この男と関わったことあるの?
でも、なんで覚えてないんだ?
こんな奴、
一回見たら忘れられないでしょ……。
「……全部……
忘れたんかいな……」
悲しい表情のままで、陸戸は寝室へ入っていった。



