本棚へ本を戻すと、私は小さくため息をついた。


今日も見つからなかった。




首に下げた鍵を握りしめて本棚を睨みつける。


テツが残したものが何か知りたいのにわからない。


閉館時間を告げるチャイムに急かされて、私は図書館を後にする。


ひんやりした図書館から一変して蒸し暑い外へ出ると外の熱気にうんざりした。


汗の張り付くような、この蒸し暑い空気が思い出させる。


テツは死んだ。


海で溺れている子供を助けるつもりが、自分が溺れて死んだのだ。

子供は船に助けられて無事だったのにテツだけ死んだ。

泳げもしないのに、人なんて助けるものじゃない。


勝手に遊泳禁止区域で溺れたどこかのクソガキのせいでテツは帰ってこない。



テツのせいで私の時間は止まったままな気がしてならない。