屋敷はお約束。 鬱蒼とした森を背負い、夏草による無法地帯の中に埋もれている。 年代を感じさせる褪せた煉瓦の壁一面にびっしりと蔦、隙間が覗いたと思ったなら、みっしりと苔。 お約束お約束。 真夏だというのに、森は近いというのに、蝉の声はなぜだか遠い。 世界そのものに遠巻きにされてしまっているようなそんな不気味の真ん中に立ち、声を張り上げる奴ならバカでなければなんだろう。 「さぁ行くわよーっ、汐崎。れぇッつゴー!」 このヒトのことですが。