もう夕方なのに蝉が鳴いている。 その声はどこか寂しげで、周りはもの寂しい雰囲気に包まれていた。 ふたりが歩いてきた道には長いふたつの影。 もう少しで着いちゃう。 この影みたいに、この道も伸びちゃえばいいのに。 なんて無謀な事を考えながら瑠璃と歩く。 隣の瑠璃はやっぱ見上げなきゃダメで、今日に限ってウェッジソールなんか履いてるからいつもよりも、背が高く感じる。 「…ありがとっ」 瑠璃の家に着くと、少し小走りになって庭に入る。 くるりと振り向くと、照れたようにお礼を言った。