「なんでもない…よ…」


なんだろ、急に弱気になってしまうんだ。



瑠璃の小指をさらに握る。




にぎにぎと、くすぐるように握ると



「…っ、…ふふっ」


くすぐったいってばっ。

少し開かれた唇から、言葉を漏らす。



そして顔を赤くしてくすぐったそうに目をつぶる。






瑠璃にキスしてしまったあの日から、どうも我慢が効かなくなってしまったような気がする。




キスしたい。

また、そんな衝動に駆られ―――…





良かった…――。

もうすぐ駅に着く。





「じゃあね凜久っ。行ってらっしゃい」


僕の小指をキュッと握って顔をチラリと見ると可愛い笑顔で笑ってみせた。