その出来事が彼女の中で "奪う"という形に歪んだまま、傷になってしまったのだ。 「凜久センパイが、好きなの」 「……え、」 その声にハッととする。 私の大好きな人の名前。 彼女に傷を残してしまった私は凜久の事を想うことさえ許されないの? 引っ越して来て、仲良くなって。 私の人見知りを直してくれたのも凜久だった。 凜久が、好きなの。 私だって、凜久が好きなんだよ―――… 今だってこんなに溢れ出して来ちゃいそうなのに。