…あ、どうしよう。
折り畳みがさはヨウくんに貸しちゃったし、そのかさは穴が空いてるし。
「あっ!!お父さんのがあるかもしれない」
そう言って家に入ろうとする。
「待って」
瑠璃の腕を掴んだ。
「僕、走って帰るから大丈夫だよ?」
「…でも、」
大丈夫だよ?ほら。
そう言って空を指差す。雨も大分弱くなってきて雲の隙間から薄日が差していた。
「じゃあ僕そろそろ行くね」
少し走った後、後ろを振り向く。
瑠璃は玄関から出てしまっていて僕に手を振っていた。
僕もブンブン振り返すと、にっこり笑った。
…もう、せっかく拭いてあげたのにまた濡れちゃうじゃん。
きっと、僕が見えなくなるまでそこにいるつもりなんだろう。
くるっと前を向くと、もう後ろを振り返らずに走るスピードを上げた。

