年上カノジョに蜜な罠



靴箱前の廊下の窓から見えるのはさっきよりも強くなった雨。

容赦なく地面を叩きつけている。




「俺、今日かさ忘れたわ」


「…僕も」


こんな風に急に雨が降ってきた時は瑠璃に入れてもらってたっけ。


こんな日でもきちんとかさを持ってくる瑠璃。



「凜久っ、一緒に帰ろ?」

赤いかさを握りしめながら僕の方へ走って来るんだ。


…そんな姿が今はたまらなく愛しい。



「俺はいつも瑠璃の折り畳みがさを借りてたっけ」


瑠璃のロッカーの中にはなぜか折り畳みがさも常備されていて、僕もヨウもかさを忘れた時は


「ヨウくんは折り畳みで我慢してね」

と、ヨウに手渡していたのを思い出す。