「ないないなああぁい!」
「また、あんたは朝から何やってんの・・・」

軽く溜め息をついて、あきれた顔で見下ろすお母さん、34歳。

「あたしの携帯ぃ・・・」
部屋中散乱状態。
おまけにあたしは錯乱。


新海愛理、16歳。
この春めでたく高校生になりました。
・・・が、幼い頃から母親と2人きりの家族だったせいか、弱虫、そして泣き虫。
周りの友達はいつもキラキラして見える。
同じ人間なのに、どうしてこんなに違うんだろう。
どうしてあたしは、こんなにも情けないんだろう・・・。
全くと言っていいほど自立できてないし、彼氏さえいない。
こんなあたしは、将来が思いやられる。
もおやだぁ・・・。

朝からすっかりブルーに入って、携帯を探す手さえも止まる。

「愛理!携帯テレビの所に置きっぱなしだった!」

言いながらお母さんがあたしの手に携帯を置く。
そんなお母さんが、今は神様にさえ見える・・・。

「ありがとおぉ・・・」
「ほら、遅刻するよ! いってらっしゃーい!」
乱雑に家から出されて、勢いに乗り一歩踏み出した。

「今日も、頑張るぞおーっ」

人に聞かれないように小さく呟いて、小走りで学校へと向かった。