日勤を終えてマンションに帰る
エレベーターから降りて
バッグから鍵を取り出しながら
マンションの通路を歩くと
……………あれ?
家の前、知らない女の人が
エコバッグを持って立ってる
………誰だろう?
少し怖かったけど
「あの、家に何かご用ですか?」
女の人に話しかけると
小さな丸い黒目を私に向け
「翠さんの妹さんの南さんですね」
なんだか『さん』が一杯で聞いてる こっちが舌噛みそう
「私、美紅と申します」
深々と頭を下げられて
「はぁ……」と うなずいたら
美紅さんはフワッと笑って
………真っ白でポッチャリで肉マンみたいで美味しそう
なんて油断したら
「私、翠さんの婚約者です」
「へぇー、お兄ちゃんの……」
ん?
ワタシ ミドリサンノ コンヤクシャ デス
「婚約者ぁ~っっ!」
私が叫ぶと
「はい。
末永くよろしくお願いします」
また美紅さんは深々と頭を下げた



