ひとしきり


ベッドに座って笑うと



「……あれ?」


目から涙が少しにじんで



「笑い過ぎて涙出たな
姫……おもしろ過ぎだし」



ゴシッ…………
手の甲で少し強く目を擦った



「なんだよ………
なんでだよ………」


なんで あんな タイミングで



『…ダメ……だよ』


なんで そんな事を言うの?姫



まるでオレのこの想いに
ストップをかけられたみたいで






こんなに好きなのに


あんなに愛しあってたのに




抱きしめたい


キスがしたい


愛してるって伝えたい





「………なんでだよ
なにが悪いんだよ」




青い薄闇の中


愛しい姫の寝息だけが


静かに響いて





絶対に姫を誰にも渡さない
と言うオレと



心の奥の奥


姫を離して


穏やかな幸せを掴ませてあげなさいと言うオレがいる


激しい胸の痛みに
頭を抱えながら





どうして
姫はオレを忘れたんだっけ?



…………ああ、そうだ



神さまは
オレの願いを叶えたんだ



姫の記憶は神さまが対価として持って行ったんだ



姫の目を覚ましてくれたら
何もいらない



その願いの対価として
姫の中から『みーくん』は消えたんだったな