「何でもいいから知りたいよ」
パタンと冷蔵庫を閉めたお兄ちゃんの背中に言うと
「――――――――無理して知る必要はないと思うよ」
「え?」
お兄ちゃんは 振り返って
「無理して思い出そうとして辛かったの姫だろ?」
確かに そうだった
退院して しばらく 早く思い出そうとして
その度に頭痛やプレッシャーとの戦いだった
そんな私に
『無理しないで大丈夫だから
記憶があっても失くても
姫は姫。オレの大切な妹だよ』
優しく支えてくれたのは
お兄ちゃんだった
「今と大して変わらないよ
こうして兄妹 仲良く暮らしてたんだ」
お兄ちゃんは そっと私の髪を撫でてから
水の入ったグラスを持って
書斎に入って行った
…今と大して変わらない かぁ
そうだよね
……そう…だよね………